ヒトラーの演説のテクニック・内容と特徴・関係する本・原稿

仕事の悩み

一日の中で、人間の判断力や思考力がもっとも低下してしまうのは夕方だと言われています。「黄昏時効果」とも呼ばれ、交渉や説得に向いており、暗示、誘導、催眠などにもかかりやすくなります。

ヒトラーは、必ず夕方5時から7時の間に演説を行うようにしていました。あえて、人間の脳の働きが低下している夕暮れ時に行うことで、民衆の心に入り込んで誘導し、自身の思想や展望を浸透させていきました。

激しいジェスチャーを取り入れる

ヒトラーの演説のテクニック・内容と特徴・関係する本・原稿

ヒトラーの演説には、激しく大きな動きのジェスチャーが取り入れられていました。演説でのジェスチャーは、さまざまな心理効果を生むと言われています。身振り手振りを大きくすることで、演説が臨場的伝わり、聴衆者に音だけでなく、視覚的にも記憶に残すことができます。

また、ジェスチャーをしながら演説することで、ヒトラー自身のモチベーションも向上し、じっと突っ立って話しているよりも、言葉強く、表情豊かになります。聴衆たちは、彼の熱のこもったその姿を目にして、大いに盛り上がります。 アドリブでジェスチャーがついてしまっていたわけではなく、ヒトラーはどんなジェスチャーが聴衆の心を掴み、どの場面でどのポーズをするのが効果的なのかを、全て事前に練り上げて作りだし練習してから本番に挑んでいました。すべてが計算され尽くした動きでした。

簡単な言葉を何度も繰り返す

ヒトラーは、演説を聴いている国民たちを「理解力が乏しく、すぐに忘れてしまう生き物」だと分析していました。そんな彼らにも、自分の主張がきちんと正しく伝わるように、できるだけシンプルで単純な言葉を選んでいました。また、一番大事なフレーズは何度も何度も繰り返し言葉にして、聴衆の潜在意識に刷り込むように訴えかけました。

特定の言葉を「スローガン」として何度も聞かることで、徐々に聴衆の警戒心を解き、好奇心を抱かせ、心に入り込んでいく手法です。聴衆は、政策のすべてが正しいことのように錯覚します。ただ、あまりに同じフレーズを繰り返し過ぎると、飽きられてしまい逆効果に繋がるのですが、ヒトラーはその辺の加減も絶妙だったと言われています。

ヒトラーの声帯は、初めは長時間の演説に耐えられるほど強くはありませんでした。演説中に声が枯れてしまったり、出なくなってしまったりすることもしばしば起こり、それでは聴衆には伝わらないと考えたヒトラーは、オペラ歌手に指導を受け、声帯に負担をかけずによく通る発声術を学び、それを体得しました。

正しく発声することによって、長時間ずっとしゃべり続けることができるようになり、声量も上がって、ヒトラーはまずます精力的に演説を行うようになったと言われています。

ヒトラーの演説の内容

ヒトラーの演説では、政治に対する具体案は一切述べられていませんでした。とにかく「ドイツ人は優れた偉大な民族である」「今こそ前を向いて立ち上がるべきだ」とまくしたて、ドイツ国民を奮い立たせようとする内容の演説ばかりでした。

当時、第一次世界大戦に負けたドイツは、イギリスやフランスと「ヴェルサイユ条約」という、とんでもない不平等条約を結ばされており、街は失業者であふれかえり、ドイツ人は地べたを這いまわるような生活を送っていました。そういったタイミングだったからこそ、「誇りを取り戻せ」という内容のヒトラーの演説に、ドイツ国民は耳を傾けたのではないかと言われています。

ヒトラーの演説の特徴的な演出

ヒトラーは「あまり利口ではない大衆に、演説の内容をきちんと伝える」ために、音の伝わり方や会場の雰囲気作りなども必要だと考えており、演説にさまざまな演出を取り入れていました。

音響

現在のコンサートやライブなどで使われている音響技術は、ナチスがヒトラーの演説のために開発したものが基礎となっています。ヒトラーが、自分の演説に集まったすべての大衆に向けて、声を届けようとしたことにより、声を電気的に拡散させることへと辿り着きました。

それまでは、建物の構造を工夫したり、発声の仕方を工夫したりして、どうにか声を届けようとしていましたが、あまり上手くいっていませんでしたので、当時としては、とても画期的な方法だったと言われています。 また、演説開始前に集まった大衆に対して、あえて不快な音を流すなどして、演説への期待感を煽る心理的誘導も行っていました。これは現在のコンサートなどでも行われている手法で、会場を沸かせる演出の一つとして活用されています。
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