ヒトラーとは
「アドルフ・ヒトラー」は、1933年から1945年の間のドイツの首相であり、ドイツを支配した独裁者です。政界進出を果たしたヒトラーは、どん底まで落ち込んでいたドイツの経済を、たった4年間で回復させてしまいました。彼の見事な政治手腕に、ドイツ国民たちは「英雄が現れた」とヒトラーに陶酔してしまいます。
しかし、「総統」に就任し、ドイツの全ての権力を握ることとなったヒトラーは、次第に英雄とはかけ離れた存在へと変貌していきます。ドイツの領土拡大を目論んで強気な外交に出た結果が、第二次世界大戦の引き金を引いてしまいます。 国内では、「ホロコースト」という政策を打ち出し、国をあげて人種差別を正当化します。「生きるに値しない命を排除する」という信じられない思想を掲げ、600万人以上のユダヤ人、精神疾患者、障害者たちの大量虐殺を実行するなど、過剰な政策ばかりを掲げる、狂気の独裁者となっていきました。ヒトラーが大衆の心を掴んだ理由
ヒトラーが、全ての権力を握る総統にまで上り詰めたのは、ドイツの経済を短期間で回復させたことも大きな理由の一つではありますが、大衆の心をがっちりと掴んで放さなかった一番の理由は、ヒトラーの高い演説力にあったと言われています。彼の演説は、絶望の淵に立っていたドイツ国民たちの心を奮い立たせ、未来への希望を抱かせました。
なんとなく集まっている大衆を、最終的には大熱狂させてしまうヒトラーの演説テクニックは、持って生まれた才能だけではなく、大衆に自分の意図を正しく伝え、支持してもらうための、綿密な計算、努力により作り出されたものでした。ヒトラーの演説テクニック
ヒトラーの演説テクニックは本当に素晴らしく、現代の演説やスピーチにもそのテクニックの多くが応用されています。オバマ元アメリカ大統領、小泉元首相らの演説にも、ヒトラーの演説のテクニックが取り入れられているのではないかという意見も聞かれます。ヒトラーの演説テクニックを紐解いていきましょう。
沈黙
ヒトラーの演説の特徴に「沈黙」の多用が挙げられます。彼の演説は「沈黙」から始まります。演説開始前の会場では、皆、近くの人と会話したりするため、ざわついています。まずは壇上に上がって自分を注目させ、会場が静かになるまで沈黙を続けます。その行動によって、聴衆に焦りと威圧感を与え「聞く姿勢」へと導くことができます。
また、ヒトラーの演説によって、聴衆が大興奮し、熱狂して声をあげたり、握手喝采が起こったときにも、クールダウンするまでヒトラーは沈黙を挟みます。沈黙を挟むことでメリハリを生み、自分の言葉を正確に届けること、「何を話すんだろう」「次はどんないいことを言ってくれるのだろう」と、聴衆に期待を抱かせる効果が得られると言われています。抑揚をつける
ヒトラーの演説は、異常なほどに緩急があります。長い沈黙を破って、静かに語り掛けるように彼の演説は始まり、話の展開に合わせて、少しずつ、力のこもった語り口へと移行していきます。そして、ヒトラーが聴衆の心へと訴えかける内容になったとき、その感情はピークを迎え、激しく心を揺さぶるような口調で、聴衆に畳みかけます。
メリハリなくダラダラと続く演説は、人々の心には響きません。抑揚をしっかりつけ、緩急を繰り返すことによって、そこにストーリーが生まれます。聴衆たちは、ヒトラーの物語に知らず知らずのうちに引き込まれてしまいます。 ヒトラーは、とくに演説の終盤でもっとも激しい口調と言葉で、聴衆に対して訴えかけていました。最後に強く激しいパフォーマンスをすることによって、演説を記憶に留めさせる効果があると考え、あえてそうしていました。