ブラック企業の定義①残業時間
「ブラック企業」とは、労働基準法や関連法令を無視、または法の網や不備を悪用することにより、従業員に長時間労働やサービス残業などを強制する企業のことを指しています。 1991年のバブル景気崩壊後、企業の経営体制は「コスト削減」に比重を置くようになり、正規・非正規雇用を問わず、従業員に過重な心身の負担や極端な長時間の労働など劣悪な労働環境での勤務を強いる企業が増え、過労により鬱を発症して自殺する者が出るなど、度々問題になっています。 最近では、入社を勧められない企業、早期の転職が推奨されるような体質の企業を「ブラック企業」と呼び、年に3回の是正勧告を受けた企業は社名を公表するというペナルティが課せられてはいますが、ブラック企業の定義は非常に曖昧で、明確にはされていません。そこで、就活や転職に役立つ「ブラック企業の定義」をご紹介します。
非常に多い
残業時間が非常に多い会社は「ブラック企業」と定義してよいでしょう。「人件費の削減」を過剰に追求しているため、仕事の量に対して人数が絶対的に不足しているのに増員も分業もせず、定時に終了させるのが絶対に無理な仕事量を社員に押し付けます。 酷い場合にはタイムカードを定時に押させてからサービス残業を強制し、勤怠記録を偽造・改竄するケースもあります。残業手当が発生しないようにするために裁量労働制やフレックスタイム制を悪用し、従業員が残業代なしで会社に拘束される時間を引き延ばす会社もブラック企業と定義されてよいでしょう。
目安の時間は?
労働基準法では1日8時間、週に40時間を超える労働は原則認められていません。しかし、労働基準法36条の「36(さぶろく)協定」を結んでいる場合は、1週間で合計15時間の残業はOKになっています。 36協定を結んでいれば、1日平均3時間までは残業することできる計算になります。毎晩終電帰りになるほど残業させる会社は、例え残業代を支払ったとしても原則的には違法になりますので、ブラック企業と定義してよいでしょう。 厚生労働省が、労働と過労死との因果関係判定に用いる「過労死ライン」を定めており、1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働が6ヶ月間続き死亡した場合は、過労死との関連性が強いとされています。
残業代が固定
残業代が固定されている企業はブラック企業と定義されます。求人広告に「月給○○万円(固定残業代を含む)」と表記している企業には注意しましょう。 固定残業代は「みなし残業手当」とも呼ばれ、基本給に残業代が含まれているため、実際の労働時間よりも少ない賃金で働かされることにより労使間でトラブルになるケースが多く、問題視されています。
残業代に上限がある
宅配便最大手のヤマト運輸が、労働基準法違反で是正勧告を受け、過去2年分の未払い残業代を従業員に支払うことになったのは記憶に新しいですが、残業代に上限を設けて、一定時間以上の残業代を切り捨てることは違法となっています。 残業代に上限がある会社、一定額しか残業代を支給しない会社はブラック企業と定義されます。もしも、勤務先の残業代支払額に不審な所があれば、きちんと記録を残しておきましょう。未払残業代は、過去2年分に遡って請求できます。
ブラック企業の定義②離職率
ブラック企業とは、法律に触れるか触れないかのスレスレの労働条件で従業員を働かせる企業や、劣悪な労働条件で働かせる企業であると定義されています。それゆえ、ブラック企業の離職率は非常に高いです。次に、ブラック企業の離職率の高さについて説明していきます。
非常に高い
ハローワークに常に求人が出ている企業はブラック企業である可能性が高いです。求人サイトに広告を掲載するには高額な費用がかかるため、ブラック企業はコストの安いハローワークをよく利用します。ブラック企業は離職率が非常に高くて常に人手不足なので、常時募集をかけている状況です。 採用人数が若干名でなく、大量募集されている会社にも気をつけましょう。たくさん採用したのち、ノルマに耐えられなかった人を次々に辞めさせるのもブラック企業の特徴です。ブラック企業は退職者が非常に多いので、ハローワークで常時募集の求人、採用人数が不自然に多い求人には要注意です。
目安の%は?
「新卒の3年後離職率」が30%を超えるような企業は、働き続けたくない理由が何かしら存在する(激務・薄給など)企業である可能性が高いので「ブラック企業」と定義してよいでしょう。一般的な企業は、3年後離職率を国に報告しています。 しかし、企業のプライバシー保護のため、「3年後離職率の低い企業ランキング」は公表されているのに、「3年後離職率の高い企業ランキング」は非公開となっています。現時点では「離職率の高い業界ランキング」からブラック企業を推測するしか方法はありません。
離職率が未公開
離職率が公開されていない企業はブラック企業と定義してよいでしょう。WEBサイト上でも情報が未公開で、面接時に離職率や有給消化率について質問してもハッキリと答えない会社は、ブラック企業である可能性が高いです。
ブラック企業の定義③パワハラ
厚生労働省は、職務上の地位や人間関係などの職場内での優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与えたり職場環境を悪化させることをパワハラと定義しています。パワハラやセクハラが横行している企業はブラック企業です。
常態化
上司から無理難題な仕事を押し付けられたり、正社員が非正規雇用の人の仕事を奪い、仕事を与えずに離職に追い込むことや、暴言・暴力により離職するまで追い詰めることはパワハラにあたります。パワハラが常態化している企業はブラック企業と定義されます。
壮絶
朝礼で叱ったり、「昔の人は怒鳴られても平気だった」などという精神論を持ち出し、人格否定やイジメを肯定するなど、ブラック企業のパワハラ・モラハラは壮絶です。従業員を人として扱わず、使い捨てにするような企業はブラック企業と定義されます。
ブラック企業の定義④理不尽なリストラがある
社員を正当な理由なく解雇・リストラすることは労働基準法で禁止されていますが、辞めてほしい社員に嫌がらせとしかいえないような追い出し工作をして退職を迫る会社はブラック企業として定義づけられています。 早期退職希望者を募集して人員を減らす会社はまだ良い方です。ブラック企業は、これまでの仕事とは全く畑違いの部署(俗にいう「追い出し部屋」)に配属して延々と雑用をやらせたり、何も仕事を与えなかったりして、会社を辞めるように仕向けます。
ブラック企業の定義⑤過労死・過労自殺の事例がある
元電通社員の高橋まつりさん(当時24歳)の過労死は記憶に新しいですが、高橋さんは、月200時間以上の残業が疑われており、過労自殺と認定されました。 過労自殺とは、長時間労働およびサービス残業に精神的・肉体的に疲れきってしまい、至ってしまう自殺のことを指しています。法令上の明確な定義は無いものの、過労死と並び、大きな労働問題となっています。過労死・過労自殺の前例がある会社はブラック企業と定義されますので、就職・転職の際は注意しましょう。
「逃げる」のも勇気
ブラック企業かどうかを評価する方法は非常に曖昧で、定義は明確にされていませんが、ブラック企業の特徴は明確です。サービス残業が非常に多く、低賃金で長時間働かせ過労死・過労自殺の例がある企業や、パワハラ・理不尽なリストラで社員を使い捨てする企業はブラック企業と定義してよいでしょう。 就活中・転職活動中の方は、今回の「ブラック企業の定義」を参考にして、うっかり入社してしまわないよう注意しましょう。現在勤めている会社がブラック企業の疑いがある方は、残業時間・パワハラの記録、場合によっては診断書を取って専門家に相談するか、転職をおすすめします。