チベット死者の書とは何か・内容と隠された秘密・できた時期
チョエニ・バルド
第二段階であるチョニエ・バルドでは、最初の1週間は平和の神である寂静尊が現れ、次の1週間では恐ろしい鬼神である忿怒尊が現れます。しかしこれらは自分で作り出した幻影を見ているに過ぎない、と見抜ければ解脱に向かえます。
チョニエ・バルドでの幻影は全て死者の意識から生まれるものなので、ここで疑いを持ったり、自分の殻に閉じこもったりすると寂静尊からの光の救済も受けられず、次のバルドに移行してしまいます。また、さまざまな救済の強い光が、微弱な薄明かりをともなって現れますが、この薄明かりの方に心を奪われてしまうと転生の道へと入ってしまいます。 閻魔など裁きを行っているように見える鬼神も、絶対的な存在ではなく自分の意識が生み出した実体のない幻影だと覚るように、と言い聞かせます。しかしそれを見抜けず心乱れると次の段階であるシパ・バルドへと移行します。シパ・バルド
このシパ・バルドは再生の道に入る段階でもあります。この段階は死から三週間ほど経っています。一番人間界に近い空間であるシパ・バルドでは意識からなる体である意識身を持ち、生きているときの幻影が見えます。
ここで、生前の家族や友人たちの悲しむ姿を見てしまうと苦悩することとなり、人間界への執着が生じ、執着が生まれると業(カルマ)に追い立てられ再生の道へと進んでしまいます。 これもまた恐れず、カルマは自分自身の幻影である、と見抜くようにと諭します。これを見抜けず解脱できないと、地獄・餓鬼・畜生・阿修羅・人・天、の六道のいずれかに転生します。 転生の道に入らないように死者に説くのがチベットの死者の書ですが、もしも六道の転生に入ってしまう場合にも、より良い道を選ぶよう教え諭します。