脳梗塞の看護計画と問題|観察/後遺症/心原性/診断/目標

仕事ノウハウ

脳梗塞の看護ケアは、脳梗塞の急性期に関して「生命危機への看護」、脳梗塞の慢性期に関して「リハビリテーションや社会復帰」に対する看護となるでしょう。

急性期

・医師の治療の介助 急性期には、医師の指示の元、生命維持や脳梗塞の急性期治療を最優先して行う必要があります。

・各バイタルサイン(反射・呼吸・循環・体温など)のチェックと異常値の発見 梗塞の範囲や部位によっては、刻々とバイタルサインが変化することもあります。また、処置中の再梗塞などもあり得るので、常にモニターをチェックしなくてはなりません。

・排泄や羞恥心に対するケア 意識がある時は尿意を催すこともあります。また、血管内治療などが開始されると穿刺部位が鼠径であることが多いため、前張りや更衣などで衣類を脱がざるを得ません。急性期であっても、羞恥心に対する心づかいが必要です。

・患者や家族の不安への対応や状況説明 刻々と状況が変化すると、治療対応に集中してしまって患者や家族への声掛けがおざなりになってしまうことがあります。患者や家族の不安に寄り添い状況説明を怠らないようにしましょう。

慢性期

・歩行や食事、排せつなどの身体介助 その麻痺レベルによって、介助内容は違ってきます。現状維持とともに、退院後の生活に合わせた日常生活援助をします。

・残存機能の保持のためのリハビリ リハビリ科医師や療法士とともに、できるリハビリと今後継続して行けるリハビリを計画し指導します。

・保清 自分で入浴できるレベルなら良いですが、介助が必要な場合は保清行動の介助と退位後の保清に関するアドバイスをします。

・今後の生活に関しての指導 患者個々によって、獲得しなくてはならないADLは違います。医療者側でゴール設定せず、患者や家族の意思を組みつつ目指せるゴール設定をします。そして、その状態をキープするための生活指導をします。

・家屋改造など退院後に向けての支援 状況によっては、家屋改善(手すりをつけるなど)が必要な場合もあります。リハビリ科と相談しつつ進めていきます。

脳梗塞の看護診断項目

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脳梗塞の病状や病態、ステージに関することは医師が診断していく事になります。看護診断では、これらの病状や病態に対して起こることや起きていること(日常生活上の不自由など)を挙げ、看護としての目線で診断していきます。

ただ、看護診断に関しては同じ事象をみても感じ方が皆違うように、個人の所見だけでは見解や診断結果の違いが出てしまいます。そこで、看護診断に統一感を与えるための診断方法がいくつか出ています。

「NANDA看護診断」=北米看護診断協会が提唱する看護診断

診断要素を13領域に分けて、できるだけ統一した看護診断ができるようにしています。

①ヘルスプロモーション ②栄養 ③排泄と交換 ④活動、休息 ⑤知覚、認知 ⑥自己知覚 ⑦役割関係 ⑧セクシュアリティ ⑨コーピング、ストレス耐性 ⑩生活原理 ⑪安全、防御 ⑫安楽 ⑬成長、発達

NANDA看護診断による看護診断項目の例

①ヘルスプロモーション(自らの健康を決定づける要因を自らよりよくコントロールしていく) →生命レベルの危機の状態であり、自身の健康に関して自らコントロールできない。

②栄養 →急性期時に栄養補給ができない。水分摂取ができない。 →慢性期時に脳梗塞による麻痺で、食事動作がスムーズにとれない。

などというように、①~⑬の項目に合わせて看護診断していく事ができます。

脳梗塞の看護計画

脳梗塞の看護計画と問題|観察/後遺症/心原性/診断/目標

脳梗塞と言っても、梗塞を起こす原因により種類が違います。種類による、看護計画のポイントをあげます。

心原性

心原性の脳梗塞とは、心臓に心房細動などの不整脈があったり、心臓弁膜症で心臓内の血液に淀みがあったりして血栓ができやすい状態があり、その血栓が脳血管にとんで梗塞を起こした状態を言います。

心原性の看護計画では、不整脈治療も視野に入れておく必要があります。

アテローム血栓性脳梗塞

脳や頸部から脳に行く太い血管の動脈硬化が原因で、脳血管が詰まり脳梗塞を起こします。この場合は糖尿病や高血圧、コレステロール疾患などのいわゆる生活習慣病による動脈硬化が主因であることがあるので、生活習慣病の改善も看護計画に入れておく必要があります。

ラクナ梗塞

比較的細い血管(直径1㎜程度)が詰まって、そのために直径15㎜以下の小さ目の脳梗塞ができた状態です。症状は軽めのこともありますが、できた場所によっては麻痺を起こします。点在することもあります。

症状に対する看護計画と、大梗塞を起こさないための予防を看護計画に入れていきます。

脳梗塞の後遺症の看護計画

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脳梗塞の後遺症は麻痺症状などが主になります。

治療

麻痺に対する治療は、リハビリテーションが主になります。リハビリ中は、自分の体が思うように動かず苦しいことも多いでしょう。また、家族などの戸惑いも少なくないでしょう。

目標:脳梗塞の再発を起こさず、リハビリを進めていける OP:バイタルサイン、麻痺の有無と程度、日常生活動作への影響、脳梗塞の再発所見の有無 TP:リハビリの介助、日常生活動作の援助、転倒転落防止のための工夫 EP:リハビリの重要性と方法、転倒などの危険性の説明、日常生活へ戻るための工夫、家族や介護者への現状の説明と今後について話し合い

脳梗塞の再発予防のための看護

脳梗塞の再発予防のための看護は、まずはリハビリの継続をすることで血液の循環を良くしながら、日常生活を営める状態をキープすることです。また、もう一点脳梗塞の種類を考慮しながら考えます。

心原性

心原性の脳梗塞であれば、大事なことは不整脈や弁膜症に対する治療です。弁膜症に対する根本治療は手術ですが、年齢や梗塞の後などを考えれば第一次選択にはなりにくいでしょう。また、不整脈はカテーテル治療が進んでいますが、状態が落ち着いてからの治療になります。

それまでは、血液をサラサラにする薬を使ったり、循環をよくするために水分をしっかりとったり運動をしたり、減塩食なども重要です。また、内服によっては取れない食べ物も出てくるので気をつける必要があります。血圧を定期的に測ります。
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