浮腫のある患者さんの看護問題とは?
浮腫の患者さんを看護する上でのメカニズム
皮下組織に必要以上に水がたまり手や足などがむくんでいる状態のことを「浮腫」といいます。
皮下組織とは、簡単に説明しますと「血管や神経が走っているところ」です。その皮下組織に水分が体重の5〜10%たまると浮腫であるといわれています。5〜10%というと中々わかりにくいですが、体重がもともと60kgある人が63〜66kgに増えるということです。 浮腫には外から観察できるもの(顕生浮腫)と観察できないもの(潜在性浮腫)があります。外から観察できる浮腫ではむくんでいるところを指で押すと後が残ったりします。そのほかにも部分的に見られるもの(局所性浮腫)と全身に見られるもの(全身性浮腫)があります。浮腫になる原因とは?
浮腫になる原因は患者さんによって違います。
・元々の病気が原因となるもの ・生活習慣(塩分の取りすぎやタンパク質・ビタミンB1不足など)が原因となるもの ・ストレスが原因となるもの
大きく分けるとこの3つになります。元々の病気から起こる浮腫は病気を治し、生活習慣から起こる浮腫は、食生活を見直し、ストレスから起こる浮腫はストレスを解消するのが最善です。浮腫のある患者さんの看護計画はどうしたらいいの?
浮腫のある患者さんの看護計画
浮腫のある患者さんの看護計画として以下の3つが挙げられます。 1「観察・アセスメント」 2「浮腫の軽減」 3「二次的障害の予防」
先ほども説明したように浮腫が起こる原因は人によって違うため、個人にあった看護計画が必要です。この3つの看護計画をさらに詳しく説明していきます。浮腫のある患者さんの観察
1「観察・アセスメント」
患者さんの浮腫の状態や程度など細かくアセスメントすることが大事になってきます。患者さんが訴えている症状から正確に原因を導き出すことによりその後のケアにつながってきます。患者さんの負担を少しでも軽減できるようきちんとアセスメントしましょう。
①浮腫の部位と程度 顔・手・足・背中など体全体を観察し、どの部分に浮腫があるかを観察しましょう。浮腫にも「軽度」「中度」「重度」という分類があります。患者さんの中には症状を訴えにくい人もいます。そんな人は会話をしている時に訴えていることがあるので注意が必要です。
②痛みの有無 症状がひどくても痛みがない場合や軽くても痛みが強い場合などいろいろあります。 痛みの訴えがない場合でも皮膚に変わりがないかや傷がないかなどの損傷がないか観察しましょう。
③随伴症状の有無 浮腫だけではなく、ほかに症状や訴えがないかなども観察しましょう。患者さんの中には、以下の随伴症状を訴える人もいます。
・皮膚の弾力の低下や乾燥、温度が低下している ・体のだるさ(倦怠感)、疲労感がある ・食欲がなくなる・尿量が減っている ・体重が増えている・お腹が張っている(腹部膨満感) ・呼吸数が増える・息切れ・喘鳴があるなどです。
④食事の摂取量 先ほども説明したように浮腫を引き起こしたり悪くする原因としてタンパク質・ビタミンB1の不足が考えられます。そのほかにもカリウムの不足も要因として考えられます。そのため、浮腫がある患者さんの病院食の摂取量も観察しておくと良いでしょう。
⑤水分出納バランス 浮腫のある患者さんのアセスメントで1番大事な項目となります。水分の摂取量と(尿の)排出量をチェックすることで体にどのくらい水分が溜まっているのか知ることができます。
⑥体重・腹囲の測定 先ほど説明したように浮腫は体の中の水分により出現します。体内の総水分量が増えることにより体重が増えます。また、腹水がたまることで浮腫を引き起こすこともあるため腹囲の測定は大切になります。
⑦薬の副作用 浮腫の治療で薬の副作用には配慮しておく必要があります。このことを頭に入れておき、薬の副作用が原因で浮腫になった場合は、原因の薬をすぐに中止しましょう。
2「浮腫の軽減」
1で観察したことを参考にして浮腫の軽減につとめましょう。「体位交換」「浮腫になった部分をあげる」「塩分・水分制限」「利尿剤の使用」「保温」など患者さんの状態に合わせ行ないましょう。
今あげた4つの軽減方法は、後で詳しく紹介していきます。3「二次的障害の予防」
浮腫の看護ケアでは、治療はもちろんですが二次的障害の予防も大切です。「感染症や外傷」「食欲不振」など、浮腫が原因でなる障害を防ぐことが必要です。
①感染・外傷を予防する 浮腫がある患者さんは皮膚の血行が悪いく、傷つきやすくなっています。その傷口から他のバイキンが入ってしまい感染することがあります。今以上に悪くならないように傷や感染の予防策を考えましょう。
②褥瘡を予防する 褥瘡と聞くとわかりにくいですが「床ずれ」ともよくいいます。病院で寝たきりになると体重で圧迫し浮腫が治らなかったり褥瘡ができます。病院に入院している間は医療従事者が体位交換を行うことができますが家ではそうはいきません。このため、退院し自宅に帰る際は、家族の人に褥瘡や浮腫の説明をしておくと良いでしょう。
③食欲不振にならないようにする 浮腫になると末梢循環が圧迫され、酸素・二酸化炭素・栄養素の運びがうまくいかなくなります。運びがうまくいかなくなると消化管の機能が低下し、お腹が張り食欲が低下してしまいます。食欲低下は高齢者に多くみられます。食欲不振になると体力低下にもつながるため、栄養を考えた食事を提供するのも看護師の役目です。
浮腫の患者さんの看護ケアはどうしたらいいの?
浮腫の看護ケアには、大きく分けて3つあります。「安静療法」「食事療法」「薬物療法」です。先ほども説明しましたが浮腫にはたくさんの原因があり、個々の患者によって症状が異なります。看護計画で得た情報を精査し、適切な看護ケアを行ないましょう。
1安静療法とは?
安静療法は、いくつか種類があります。①体位交換②体位挙上③皮膚・粘膜の清潔保持④保温です。
患者さんがもともと持っている病気により浮腫が発生する場合、その元となる病気を治さない限りよくはなりません。安静療法を行うことにより浮腫の悪化を防ぎます。では、先ほどあげた4つの安静療法を1つずつ分けて説明していきます。①体位交換
体位交換とは文字を読んで字の如く体位の向きを変えることです。病院に長期間、入院しているとベッド上で過ごすことが多くなってきます。普通の人ならベッド上で自分で体位を交換することもできますが寝たきりの人や安静の指示が出ている人は自分ではできません。
長時間、体位交換を行わなわず同じ体制でいると、自分の体重でベッドが圧迫され浮腫や褥瘡ができます。体位交換は、2時間に1回行うのが良いとされています。体位交換を行う際は、患者さんの衣類のシワやシーツのシワを伸ばしてあげることも大切です。②体位挙上
先ほど説明したように浮腫は手背や足背によくできます。そうした場合、下肢や上肢を浮腫のできているところに枕を使って挙上すると血行の流れがよくなり軽減されます。先ほどの体位交換と一緒に浮腫の部分を挙上してあげましょう。
③皮膚・粘膜の清潔
皮膚が湿潤していると褥瘡ができやすくなります。失禁がある患者は、乾燥と清潔が大切です。清拭や陰部洗浄を行い清潔を保ちましょう。
④保温
浮腫の軽減に保温は適切です。足浴や手浴をしてあげると血行が良くなり浮腫も軽減できます。気持ち的にもゆったりしたりするので浮腫の原因でもあるストレスの軽減につながります。手軽にできる看護ケアなのでぜひ行ってください。
2食事療法とは?
塩分の取りすぎやビタミンB1・カリウムの不足は浮腫ができる原因です。食事としては、「低エネルギー食」と「減塩食」です。低エネルギー食は、基礎代謝を低下させるため、体重も減り肥満を改善させます。肥満になると末梢でのエネルギーをより多く必要とします。そのため、心臓への負担をかけ脂肪沈着をきたします。
減塩食は、高血圧の管理や循環血液量の増加を防ぐために用いられます。体の中に塩分(ナトリウム)がたまると体の中の水分もたまってしまします。そのため塩分を抑える減塩食が用いられます。