せん妄患者の看護について
病棟勤務の看護師の場合、せん妄状態となっている患者さんとかかわった経験が誰でもあります。しかし、せん妄と認知症を混同している場合や、どのような看護を提供していいかわからなかったという方もいるでしょう。
せん妄患者の看護について紹介します。せん妄状態の患者さんとの関わりに生かしてください。せん妄と認知症の違い
せん妄状態の患者さんの看護についてみていく前に、まずはせん妄と認知症の違いをしかりと理解しておきましょう。せん妄と認知症、それぞれの特徴を紹介しますので、知識の再確認をしてください。
せん妄とは
せん妄とは、環境の変化や薬の影響などによって生じる意識障害の一種です。失見当識や幻覚、人格の変化などの症状が出現します。認知症とは異なり一過性の症状のため、原因を除去することで改善することが多いです。高齢者が入院による環境の変化に対応できず、入院中に発症することが多いです。そのため、治療や看護に影響が生じることもあります。
せん妄には、①夜間せん妄、②術後せん妄などがあります。夜間せん妄
夜間せん妄は、夕方から夜間にかけて起きるせん妄のことを言います。日中よりも刺激が低下し、暗さによって不安が増すことにより生じ、日中には症状が出現しないことが特徴です。日中の活動量を増やすことで、夜間せん妄が生じる可能性を下げることができます。
術後せん妄
術後せん妄は、術後数時間~数日後に発症するせん妄のことを指します。手術による不安や疼痛、薬剤、環境の変化などによって生じ、1週間程度で改善する場合が多いです。
認知症とは
認知症とは、加齢などが原因で脳が委縮し、脳細胞が正常に働くなったことが原因で、生活に支障をきたしている状態をいいます。物忘れが代表的な症状ですが、物忘れだけでなく徘徊や幻聴、暴言・暴力などいろいろな症状が出現します。
症状は記憶障害や判断力の低下などの中核症状と、妄想や興奮状態、うつ状態などの周辺症状に分けることができます。出現する症状は患者さんによって異なりますが、脳の萎縮している部位によって異なることがわかっています。 認知症は大きく分けて3種類に分類でき、①アルツハイマー型認知症、②脳血管性認知症、③レビー小体型認知症です。それぞれの特徴を簡単に紹介します。アルツハイマー型認知症
脳の海馬の部分を中心に脳の萎縮が見られ、女性に多いです。認知機能障害やものとられ妄想、徘徊などの症状が多くみられます。治療には薬物療法や音楽療法などの非薬物療法などが行われることが多いです。
3種類の認知症の中で最も発症している人の割合が高く、全認知症患者さんの約60%がアルツハイマー型認知症と言われています。脳血管性認知症
脳梗塞などの脳の血液循環障害が原因で、脳の一部が壊死してしまうために生じる認知症で、女性よりも男性に多く発症します。まだら認知症や過剰のコントロール障害などの症状が出現することが多いです。ほかの認知症と異なり、急に発症することが特徴です。全認知症患者さんの約20%が脳血管性認知症と言われています。
レビー小体型認知症
レビー小体というものが形成されることで発症し、アルツハイマー認知症のように脳の萎縮が見られない場合が多いです。認知既往障害やうつ状態、妄想などの症状が出現することが多く、女性よりも男性に多いです。
基本的に寛解と増悪を繰り返しますが、急激に症状が悪化することもあります。全員致傷患者さんの約10%がレビー小体型認知症と言われています。せん妄患者の看護の方法・ケア方法
せん妄を起こす高齢者は多く、対応に困る場面もあるでしょう。せん妄患者へのかかわり方を紹介しますので、参考にしてください。
せん妄状態のときの関わり方
患者さんがせん妄状態にあるときは、できるだけ刺激しないことが大切です。穏やかな表情で優しい口調を心がけ、自分が看護師であること、何をするために来たのかということなどを伝えるようにしましょう。
また、せん妄状態となっている患者さんは、危険行動がみられることもあります。患者さんの状態だけでなく、点滴や医療機器などによって危険な状態とならないように配慮しましょう。症状が出ていないときの関わり方
症状が出ていないときは、せん妄状態のときがどんなに大変だったか、どんな行動をとっていたのかということを患者さんに話してしまいたくなります。しかし、せん妄状態になっていたときの行動や発言に関しては自覚のないことが多いです。そのため、あまり詳しく話さないようにしましょう。
せん妄状態になると、夜間眠れない分日中に眠りがちになってしまい、昼夜逆転になりやすいです。しかし、昼夜逆転となってしまうとせん妄状態の改善にはつながりません。昼夜逆転が解消できるよう、できるだけ日中は刺激を与え、夜間は休めるように関わりましょう。せん妄患者の観察項目
せん妄状態となっている患者さんは、疾患に対する観察項目以外にも、せん妄状態の患者さんに関する観察項目も確認する必要があります。どのような観察項目を意識して看護を行うべきか見ていきましょう。
危険行動
まず、最も大切なことは危険行動がないかということです。普段は行動に問題のない患者さんでも、少し目を離したときに危険行動をとってしまい、ケガをしてしまうリスクがあります。
患者さんが危険行動をとっているかどうかということだけでなく、危険行動を誘発している要因も併せて確認しましょう。あまりにも危険行動が強い場合、抑制を考えることもあります。し、抑制を行うことでさらに興奮状態となってしまうこともあるため、極力抑制はしなくてもいいように対応しましょう。