【男女別】アイヌ出身・末裔の芸能人|日本/少ない理由
過去にいたアイヌの芸能人
安東ウメ子
安東ウメ子さんは、アイヌ民族の音楽家で、歌とムックリの名手として知られていた芸能人です。ムックリとは口琴と呼ばれる楽器の一種で、竹製の薄い板を口にくわえて紐を引っ張る事で口の中で音を共鳴させる、アイヌの伝統楽器です。
ウメ子さんは生前、CDやアルバムを出し、同じくアイヌ出身の芸能人で音楽プロデューサーであるOKIさんのプロデュースで、楽曲を発表していました。また芸能人としての活動の他にも、アイヌの文化やアイヌ語を伝える講師としても活躍していましたが、2004年に72歳で亡くなりました。松前ピリカ
松前ピリカさんは、昭和に活躍したアイヌ出身の芸能人です。ピリカはアイヌ語で「美しい」「良い」という意味になります。
17歳で芸能人となることを志し、旅芸人の一座に入ります。のちに「松前ピリカ一座」を主催し、自身も数十人の芸能人を抱える座長となります。ピリカさん自身も美声と知られ、全国各地を巡業し、一世風靡しました。 また芸能人として活動しているかたわら、ふるさとへの慈善活動も積極的に行い、寄付や植樹をしました。松前ピリカさんの故郷である平取町にある「義経公園」にある千本桜は、ピリカさんによるもので、園内には顕彰碑も建てられています。アイヌの芸能人が少ない理由
アイヌ出身芸能人で、今も頻繁にTVで見かけるのは宇梶剛士さんだけですが、他の芸能人として活躍している方々も、TVには出演しないものの、国内だけでなく世界に活躍の場を広げている事が分かります。
しかし、それでも「アイヌ出身芸能人」は少ないように見えるでしょう。それはおそらく、日本国内におけるアイヌ民族の人口の割合から言って仕方のないことに思えます。少ない人数のなかで、さらに芸能人となろうと志す人は、さらに少ないでしょう。 2017年現在、日本国内でアイヌ民族であるという人が、どれほどいるのかは正確な数は分かりません。アイヌ民族も大和民族も日本人という括りには違いないので、政府の調べでその人口比率を調べる事はないでしょう。しかし過去に民間団体や東京都で調べたデータが存在します。国内にいるアイヌ人口
2013年に北海道アイヌ協会が行った調査では、北海道内には16,768人。北海道の人口の約3%にも満たない人数です。北海道外に住むアイヌに関してもデータは少なく、最も新しいデータは1988年に行われた東京都実態調査です。それによると、都内に住むアイヌ民族は2700人と見積もられています。
芸能人として活動するのに最も適しているのは東京都ですが、それでも30年前のデータで2700人です。現在は増えているのか減っているのかも定かではありませんが、今も変わらないとしても東京の人口の約0.3%です。この割合では、アイヌ出身芸能人が少ないのも納得せざるを得ないでしょう。アイヌの芸能人の特徴
アイヌ出身の芸能人は、芸能人としての活動をしていると同時に、アイヌの文化や伝統を伝えている人がほとんどです。アイヌの伝統楽器を演奏したり、アイヌの伝統歌を元にしたり、アイヌに伝わる踊りを踊って、芸能人として皆を楽しませながら、自分たちの故郷を伝えようとします。
それは故郷を愛する心があるからです。もっと私たちの事を知ってほしい、私たちの故郷を知ってほしいという思いから、芸能人となる事を選びました。彼らや彼女たちが、自分たちの故郷の伝統芸能を守って発信しているおかげで、私たちは今もアイヌの文化や芸能に触れられる事ができます。 アイヌ出身の芸能人は、アイヌ民族と大和民族だけでなく、過去と現代をつなげる架け橋なのでしょう。アイヌの伝統芸能
アイヌの伝統芸能は古式舞踊が挙げられます。お祭りやお祝いなどで踊られた伝統的な踊りで、「ウポポ(歌)」に合わせた「リムセ(輪舞)」が有名です。地域によって、曲や踊り方は異なり、中にはアイヌ刀を使った剣の舞もあります。
また、ユーカラと呼ばれる叙事詩は、アイヌの英雄の話をリズムを取りながら語り、短い物から何日もかかるような長い物もあります。アイヌ文化衰退とともに失われて行きましたが、近年は徐々に若い人がアイヌの伝統芸能を習得し、文化を新しい形で発信したりしているそうです。アイデンティティを守ろう
アイヌ出身の芸能人たちは、アイヌである事を誇りにしていました。しかし故郷や自分のルーツを大切にするのはアイヌだけではありません。有名な芸能人になると、自分の故郷の親善大使に起用されたり、自分の故郷の話をネタにバラエティー番組で笑いを取る事も少なくありません。
また世界で活躍する日本人も「日本人である」という事を誇りに頑張っている人も多いでしょう。ノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロさんも、日本に住んでいたのは幼稚園の頃で、国籍もイギリスに移しましたが、日本の事は自分のルーツとして大切に思っているそうです。 あなたも一度、故郷や自分の先祖に思いを馳せてみてください。きっと新しい何かが見えてくるでしょう。