掻痒感の看護のケア・アセスメント・目標・観察項目

仕事ノウハウ

かゆみ(掻痒感)の原因

かゆみ(掻痒感)がおこる原因は、本人だけでなく同時に家族間の遺伝的体質が影響しているとも考えられます。化学物質の過敏症など生活環境が大きく影響していることもあります。看護師は患者の基礎データをアセスメントし家族歴や生活環境などの情報を統合して、かゆみ(掻痒感)の原因や憎悪因子を判断します。

薬物によっては、掻痒感を伴う皮疹が発生することがあります。

痒みの部位

・かゆみの部位を観察することで基礎疾患が推測できます。局所性では、頭部、陰部や肛門部なども含まれます。 ・観察する時は、明るい自然の光の下でプライバシー保護が可能な環境をつくり患者に対し十分な配慮が必要です。

皮膚や粘膜の状態

・皮膚の乾燥や湿潤では発汗状態がわかり、汗腺の働きが推測できます。 ・爪の状態や掻破は、痒みの程度を推測できます。掻破が多く、出血痕がある場合は皮膚の摩擦を繰り返しているため、爪の甲が磨かれ光っています。 ・発疹や発赤がある時は皮膚疾患が疑われます。

かゆみの程度と性質

かゆみの程度は、患者の表情、表現から読み取ることが重要になります。「夜も眠れないほど痒い、何をするにも集中できない、イライラする」など、かゆみで日常生活に影響を及ぼしている、精神的にも影響を受けていることが考えられます。そのシグナルを読み取ることも看護師の重要な仕事です。

検査データ

検査データは、基礎疾患の状態や感染の有無などの看護情報として役立ちます。アレルギー判定、皮膚の症状を悪化させる物質や痒みの原因を特定できます。

治療内容と治療薬

日常生活に影響を及ぼすような、抗ヒスタミン薬やステロイド薬などの治療内容や治療薬の作用を理解し、日常生活への影響をモニターをします。それにより薬物の種類や容量、副作用などの早期発見に役立ちます。

掻痒感の看護の目標

・積極的な看護ケアにより、かゆみ(掻痒感)が軽減する、消失する。 ・かゆみの影響による睡眠障害や食欲低下などを看護ケアにより緩和する。 ・集中力低下やイライラ感を緩和する。

掻痒感の看護 入浴時や前後の注意点・入浴方法

掻痒感の看護のケア・アセスメント・目標・観察項目

入浴時や前後の注意点

・浴室の温度を22度~26度に設定しておきます。 ・転倒事故防止のため、浴室や脱衣場の環境整備をしておきましょう。 ・お湯の温度は、皮膚に刺激が少ないぬるめの温度38度~40度位でお湯加減を確認しておきましょう ・入浴前後にバイタルチェックを行います。 ・石鹸は低刺激の弱酸性を用意します。 ・タオルは肌への刺激が強いナイロンなどは避けましょう。 ・入浴後は肌の乾燥を防ぐためにも保湿クリームやワセリンなどを塗布しましょう。 ・爪が伸びているとかゆみで掻破し、皮膚を傷つけてしまうため爪を短く切ります。 ・湯冷めしないように、速やかに更衣を行えるよう衣類の準備をしておきます。衣類はコットンやガーゼのような柔らかい素材のものが最適です。

入浴方法

入浴前に必ずバイタルチェックを行いましょう。室温、お湯の温度は最適か確認しておきましょう。入浴時は、低刺激性(弱酸性)の石鹸を使用します。一般的な石鹸はアルカリ性で、洗浄力は強いのですが、皮脂膜を洗い流してしまうため皮膚が乾燥し、掻痒感(かゆみ)が強くなってしまいます。

弱酸性の石鹸を十分に泡立てて、ごしごし擦らず優しく撫でるように洗い、石鹸が体に残っていると刺激になりかゆみが強くなりますので、十分に洗い流しましょう。 入浴後は、肌の乾燥を防ぐために保湿クリームやワセリンなどを体全体に優しく塗布しましょう。入浴後もバイタルチェック、気分は悪くないかなど確認を忘れずに行いましょう。衣類もウールや化学繊維の物は避け、肌に刺激が少ないコットンやガーゼなど柔らかい素材のものを着用するようにしましょう。

掻痒感の看護の清拭

掻痒感(かゆみ)の皮膚の清潔を保つには入浴が最適ですが、どうしても入浴ができない時には看護師が清拭を行います。

清拭は皮膚や粘膜の汚れを取り去り、身体の清潔を保つとともに患者は心身の爽快感を得られます。清拭を行うことにより看護師は皮膚の状態や全身の状態を観察します。マッサージ効果により血行を促進します。また、看護師と患者のコミュニケーションの良い機会にもなります。

清拭時の留意点

清拭の看護をする上での留意点 その内容や理由など
・清拭前後にバイタルチェック 必ずバイタルチェックを行い、その時の気分や身体の調子を患者に伺い、清拭を行うか判断します。
・室温管理 室温は22度~26度がよいとされていますが、寒がり、暑がりと個人差がありますので、その時の最適な温度管理を行います。また、冬場は清拭をした部分がすぐに冷えてしまうので、部屋の温度に気を配る必要があります。
・お湯の温度 皮膚に当たる時の清拭タオルの温度は40度くらいが刺激が少なく爽快感、気持ちよさを感じる温度です。
・時間の目安 身体への負担を軽減するためにできるだけ短時間で行い、20分~30分以内を目安に終えるようにしましょう。
・プライバシー保護 患者の羞恥心を配慮するためにも、カーテンなどを引いてプライバシーを保護する必要があります。
・皮膚の観察 清拭をしながら看護師は患者の全身の皮膚の状態(色や発疹・傷の有無など)を観察します。特に汚れやすい部位は褥瘡などができやすいので気をつけましょう。
・食事前後1時間以内は清拭は避ける 食事直前は、血糖値が下がり貧血を起こしやすいという理由です。食事直後は、マッサージで嘔吐しやすい。マッサージにより皮膚表面に血液が集中するため、食べ物の消化に必要な血液が胃に届かず消化不良を起こしやすくなる為です。
・必ずしも末梢から中枢に向けて行わなくてもよい 拭く方向の違いにより末梢皮膚血流量に大きな違いはみられないためです。

清拭の手順

その一

① バスタオルなどで全身を覆い、寒さを感じさせないように上半身、下半身と分けて行います。

② 清拭を始める前に絞ったタオルの温度を確認します。看護師は自分の腕の柔らかい部分にタオルを当て熱すぎないか確認してから清拭を始めます。 ③ 身体の上から下に向かい拭いていきます。顔は、目、鼻、額、頬の順に拭いていきます。顔が終わったら首、次に耳を拭きます。耳の裏は匂いが強い部分ですので、綺麗に拭いてあげましょう。顔を拭き終わったら、余計な水分が残っていないか、残っていたらその水分も綺麗に拭きとります。

その二

④ 顔全体と首が終わったら、 上肢:前腕を拭く場合は、手の関節を支え、上腕を拭く場合は、肘関節を支え不安定にならないように軸を支えます。 腋窩、胸部、腹部:仰臥位になって頂き、身体半分にバスタオルなどをかけプライバシーを保護します。 下肢:膝を立てて拭き、片側の足にはバスタオルを掛けておきます。後頭部の清拭を終えたら首から下に移ります。

背部・腰部・臀部:看護師の方に体全体が向くように側臥位になって頂き、バスタオルをかけ筋肉に沿ってマッサージするように拭きます。最後に陰部ですが、繊細な場所のため患者ご自身でできる場合はお願いします。 ⑤肌の乾燥を防ぐためには、清拭を終えたら速やかに保湿クリームやワセリンを身体全体に塗ってあげましょう
タイトルとURLをコピーしました