大腿骨頸部骨折では、手術した後3日程度で車椅子での移動を行い、2~3週間経過したら歩行訓練が行われます。早くて1ヶ月前後で、杖などを利用し、退院となります。退院後もリハビリ通院となる場合もあります。大腿骨頸部骨折のリハビリでの看護ポイントをご紹介します。
高齢者
大腿骨頸部骨折は、高齢者に多い疾患です。高齢者は、安静する期間が長くなればなるほど、筋力や可動域が急激に低下していきます。痛まないように同じ姿勢ばかりとり、活動性が低下すると、関節拘縮や廃用性症候群の原因となります。
股関節周囲に関節拘縮を呈すると、歩行訓練の阻害因子となります。関節拘縮や廃用性症候群を予防するためにも、看護師が声かけを行い、動かせる範囲だけでも良いので早期に身体を動かすように促しましょう。足首を動かす運動は手術後からも行え、疼痛も伴いにくいのでおすすめです。歩行訓練
腫れや疼痛が和らいできたら歩行訓練が行われます。いきなり歩行を行うのではなく、まずは平行棒での立ち上がりから行います。骨折や手術をして、安静にしている間に股関節や膝・足関節の可動域が悪くなっている患者さんも多く、歩行訓練を行う前には関節の柔軟性を促す運動を行います。
歩行訓練は、理学療法士が行う場合が多いですが、リハビリを行っている時間以外もなるべく歩行を促しましょう。トイレや浴室に行く間の距離を看護師が付き添い、歩行を促すようにしましょう。荷重など
大腿骨頸部骨折の術後の足には全ての体重をかけることはできません。手術した方の足には体重の1/3程の荷重をかけることから始めることが多いです。荷重の範囲は患者さんの状態によっても異なりますので執刀医に確認しましょう。
体重の1/3の荷重とはいっても、どの程度の荷重をかければ良いのかわかりにくいです。患者さんの両足の下に1つずつ体重計を置き、少しずつ患側の下肢に体重をかける練習をすることで、1/3の荷重の感覚を掴んでもらいます。治癒具合によって1/2荷重、全荷重と荷重しても良い重さが変わってきますので、適切な荷重をかけてリハビリを行いましょう。大腿骨頸部骨折の看護での観察項目
大腿骨頸部骨折の看護での観察項目をご紹介します。大腿骨頸部骨折は、骨折による疼痛、可動域制限などの症状の有無という身体症状を観察するのはもちろんのこと、受傷を受け入れているかどうか、リハビリへの意欲があるかを確認する必要があります。患者さんが受傷したことを受け入れられていなかったり、リハビリに意欲的に取り組めないと回復が遅くなり、ADLの大幅な低下に繋がります。
また、退院後は、家族やキーパーソンの支援が必要になります。自宅でどのように生活していたのか、退院後はどのような支援が必要になるのかを把握し、退院前に生活環境を調整しましょう。症状など
大腿骨頸部骨折の主な症状は、股関節痛です。ほとんどの場合、立位をとることや歩行することができなくなります。疼痛が酷い場合には、起き上がりや座位保持も困難になる場合もあります。疼痛によって、病棟内でのADLがどれ程阻害されているかを観察しましょう。
大腿骨頸部骨折では、ズボンや靴下などの下衣更衣、入浴動作、排泄動作は看護師の介助が必要になる場合も多いです。疼痛が軽減し、介助が必要なくなってからであっても、人工骨頭置換術を施行している患者さんであれば、脱臼肢位でADL動作を行っていないかの確認も行い、必要に応じて動作方法の指導を行いましょう。