生活保護が受けられる条件は?
生活保護の受給条件は3つ
生活保護を受給している人はどのくらいいるのでしょう。2016年12月の厚生労働省の発表によると、生活保護受給世帯数は163万6902世帯で、現在の制度が始まった1950年以来、過去最高の世帯数だそうです。1995年の生活保護受給世帯数が60万世帯なので、この20年間で2.5倍に増加したことになります。
この生活保護の受給条件は次の3つになります。 1.最低限の生活を維持していけるだけの収入が無いこと 2.生活を援助してくれる身内や縁者がいないこと 3.家や車などの資産、財産が無いこと この3つの条件をクリアしているかどうかを、福祉事務所が調査・審査し条件がクリアされていれば受給が決定します。
受給条件の審査の時には「あらゆる努力」が要求される
受給条件の審査では福祉事務所がさまざまな調査を行ないます。次のような4項目について調査や指導が行なわれて受給の可否が決定されます。
1.資産を活用すること 土地や不動産・自動車・預貯金・貯蓄性のある生命保険などの活用できる資産があれば、売却するなどの方法で生活費に充当することが優先されます。所有しても良いとされるものには次のようなものがあります。
・生活に必要な家電製品:テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、電子レンジ、トースター、炊飯器、扇風機、掃除機、ストーブ、空気清浄機、ドライヤーなど ・IT機器:携帯電話やスマートフォン、パソコン、タブレット端末、プリンターなど ・生活に必要な家具:ベッド、テーブル、ソファー、椅子、タンス、棚など ・自転車や電動自転車、介護用ベッド、車椅子や電動車椅子、犬猫などのペット とされています。実際にはたいした値が付かないので売却できないようなものも所有はOKです。
2.能力を活用すること 世帯のなかで働くことができる人はいませんか?その能力に応じて働くことに努めることが求められます。
3.扶養義務者からの扶養を活用すること 両親や成人している子供、兄弟姉妹、または親戚などから、できる限りの援助ができないか依頼することが求められます。母子家庭で養育費をもらっていないようなときは、前夫への養育費支払いの要請も対象になります。
4.他の制度を活用すること 生活保護以外にも給付の制度があります。雇用保険・健康保険・各種年金・児童扶養手当・高齢福祉手当・身体障害者福祉手当などです。このような給付の対象になっている人は、それを優先して受給し生活費に充てることが求められています。
このような項目の審査・指導のうえで、生活保護の受給条件を満たしているかが審査されて可否が決定されます。生活保護の受給金額は?
生活保護の種類と内容は?
生活保護には食費や光熱費などの生活扶助をはじめ、必要に応じて以下のような扶助が受けられます。 ■生活扶助:食費・被服費・光熱費などの日常生活に必要な費用で、基準額が決まっています。 ■住宅扶助:アパートなどの家賃で、定められた範囲内で実費が支給されます。 ■教育扶助:義務教育を受けるために必要な学用品費で、定められた基準額が支給されます。 ■医療扶助:医療サービスの費用で、直接医療機関へ支払われます。本人負担はありません。 ■介護扶助:介護サービスの費用で、直接介護事業者へ支払われます。本人負担はありません。 ■出産扶助:出産費用で、定められた範囲内で実費が支給されます。 ■生業扶助:就労に必要な技能の修得などにかかる費用で、定められた範囲内で実費が支給されます。 ■葬祭扶助:葬祭のための費用で、定められた範囲内で実費が支給されます。 生活扶助と住宅扶助が定常的に受給できるもので、この二つを合わせた額が「最低生活費」とされています。その他の扶助は臨時的なものと言えるでしょう。
生活保護の受給金額は地域や世帯構成によって異なる
住んでいる所によって生活保護の受給金額は異なります。全国各地が1級地から3級地に分類されていて受給金額が決められています。地方自治体のホームページで級地や受給金額などを調べることができます。
地域によってどのくらい差があるのか見てみましょう。標準3人世帯(33歳、28歳、3歳)の生活扶助費です(2017年3月現在)。 出典:生活保護情報サイト「生活保護ガイド」http://seikatsuhogo.jp/shikyugaku/ 1級地-1(神奈川県横浜市)164,830円 3級地ー2(福島県本宮市) 127,750円 約3万7千円の差があります。
世帯構成による差はどうでしょうか。横浜市での生活扶助費です。 標準3人世帯(33歳、28歳、3歳) 164,830円 高齢者単身世帯(67歳) 81,840円 高齢者夫婦世帯(68歳、66歳) 123,760円 母子家庭世帯(33歳、5歳、3歳) 150,500円 通常はこの生活扶助費に住宅扶助費が加わります。
東京都での最低生活費は?
最低生活費は生活扶助と住宅扶助を合わせた金額で生活保護の受給審査などの際に基準となるものです。東京23区に住む人の最低生活費を見てみましょう。 出典:お金を学べる情報ポータル「ファイグー」http://camatome.com/2012/11/seikatsuhogo-jirei.php
世帯構成 生活扶助費 住宅扶助費(上限) 最低生活費 30歳の単身世帯 7万9,230円 5万3,700円 13万2,930円 70歳以上の単身世帯 7万4,630円 5万3,700円 12万8,330円 65歳の夫婦2人世帯 11万9,200円 6万4,000円 18万3,200円
生活保護ではこの最低生活費が全額受給できるわけではありません。何らかの収入があれば、最低生活費との差額が受給されことになります。貯金がある場合生活保護は受けられる?
貯金がある場合に生活保護を受けられるか、という問題に対しての回答は、その貯金の額によると言えます。生活保護の受給審査のときには「あらゆる努力」が要求されます。そのなかに「資産を活用する」ということがあって、資産のなかには預貯金が当然含まれます。
生活保護申請時の貯金がいくらまで許されるのかの金額は特に定められていません。審査・調査するケースワーカーなどによって異なることもありますが、たいていは1ヵ月の最低生活費の半分程度であれば認められているようです。10万円前後でしょうか。それ以上の貯金がある場合は、貯金が10万円程度に減るまでは生活保護の審査にはパスしない、ということです。 タンス貯金はどうでしょうか。タンス貯金は現金を所有していることと同じですから、審査にはパスできません。ケースワーカーの人がタンスの中まで調べることはないのですが、貯金通帳の出納記録や生活ぶりなどからタンス貯金の存在がバレテしまうことが多いそうです。生活保護で貯金は調査される?
生活保護の申請時の審査ではもちろんですが、生活保護受給時でも貯金の状況は調査されます。生活保護法第29条に基づいて、生活保護の審査をする福祉事務所などは対象者の預貯金などの調査を行なうことができて、銀行や郵便局などに調査書類が行くこととなります。法律で決められていることなので、銀行などの金融機関は対象となる貯金口座などの情報の全てを提出するそうです。
生活保護申請時の審査では6ヵ月前にさかのぼって預貯金の入出金の記録などが調べられます。また、生活保護の受給時も年に一度、調査が行なわれます。預貯金の残額が大きいときはもちろんですが、入出金記録に不審な点があればその使途などが追求されることになります。 ただ、生活保護を受給している人は貯金をしてはいけない、ということではありません。ある限度のなかで貯金することは認められているのです。